遺産分割に乗ろう
「第2次パックスアメリカーナ」の守護神は、「金本位制復帰」ナィ教授は、アメリカが依然として覇権国であることを次のように述べた。
「1971年のドル・金本位制の終わりは、時折、アメリカの覇権の終わりともみなされている。
だが、1971年は、世界が経済上の多極体制に復帰したことを意味するものではなかった。
アメリカは、依然として他のどの諸国よりも、経済の力の源泉をはるかに保持していたのである」当時日本の通説は、「N・ショック」を「ドルとアメリカ覇権終馬の始まり」と解釈していたが、ナイ教授はこのような見解に正面から反対の立場を表明した。
そしてその理由を次のように述べている。
「2つの事実が、アメリカが依然として圧倒的な経済力を持ち合わせていることを示している。
第1に、国家の危機を感じ取ったときに自らゲームのルールを変更し得たこと、第2に、金との免換が停止されたあとも、他の国々はドル保有の道を選んだことである」ナィ教授の主張で特に重要なことは、「アメリカはゲームのルールを変える力を持っている」ことを、「アメリカが依然として覇権国である」ことの理由にあげていることである。
私が『新世界秩序』で示した「アメリカの覇権は、第2次世界大戦以後現在まで継続している、N・ショックでかえってドルは強化されている」との見解と共通するものである。
経済力の競争で最も強い武器は、「国際通貨制度という為替のルール」を変更できる政治外交力である。
すでにアメリカは「N・ショック」で一度実践したのである。
アメリカは「ゲームのルールを変更する力」を、今後もことあるごとに行使しながら、創世紀の「新ローマ帝国」への道を歩み続けるのである。
これが「第2次パックスアメリカーナ」の姿なのである。
ゲームのルールを変更する」アメリカドル強化戦略アメリカはこの「ゲームのルールを変更する」パワーを21世紀の「第2次パックスアメリカーナ」確立のために再度行使して、「経常赤字4000億ドル」という21世紀初頭のアメリカ最大の弱点を克服するに違いない。
変動相場制という現行の「為替のルール」から、「ドル」と「金」を結びつけることにより、ドルの魅力を従来の「フローのドル」から「ストックのドル」に高めるのである。
他国から見た「フローのドル」の魅力は、アメリカ国内への有価証券や直接投資の高いリターン(収益というフロー)である。
「ストックのドル」の魅力とは、「ドル」に転換されて運用される海外からの対米投資が、いつでも「金」という誰の借金でもない「資産」で常時担保されることである。
1900年から1914年までの古典的金本位制や1925年から1931年までの再建金本位制のような主要国が全て金免換に応じていた時代とは異なり、現在「金」との免換に応じている国は一国もない変動相場制のときに、アメリカだけが自国通貨「ドル」にたいして「金」との免換に応じれば、「ドル」の魅力は際立つはずである。
社債でたとえれば、発行時に無担保社債として発行したものを、発行体がある日突然に担保をつけますと一方的に宣言するようなものである。
この無担保社債には人気が殺到して有担保社債と同水準までプレミアムがつくに違いない。
世界中の国が「不換紙幣」を発行しているときに、アメリカだけが「ゲームのルールを変更する」メリットは計り知れないのである。
海外の機関投資家に「サプライズ」を与えることは必定である。
「ドルの金交換再開」は直接的な効果として、対米証券投資を誘発するはずである。
この効果により、アメリカの株価は上昇し、アメリカの国債にも海外からの需要が高まりアメリカの金利は下落し、経済活動をアメリカは「第2次パクスァメリカーナ」実現のために、「ドル強化戦略」による他国からの対米投資増大という他国依存の手段だけで目的を達成しようとしているのではない。
みずからの自助努力も確実に実行していたのである。
それは共和党が上院と下院で多数派をI年ぶりに占めた1994年の中間選挙以後に、「法律制定」という国内ルールの改革によってなされた。
それは「4大改革」といえるほど、その後のアメリカ経済の強化に大きく貢献している。
1999年皿月にGFRB議長は「アメリカ経済はニューエコノミー時代に入っている」ことを明言したが、私はアメリカの「独り勝ち経済」の原動力には、共和党の主導による1996年から1997年にかけての「4大改革」が大きく寄与していたと考えている。
これらはアメリカ国内の諸ルールにたいして「理念の大きな転換」をおこさせたのである。
「4大改革」とは、以下の「法案の成立」のことである。
一段と活発化させるであろう。
(1)1996年、「新農業法案」の成立(2)1996年、「福祉削減法案」の成立(3)1997年、「新移民法案」の成立(4)1997年、「財政均衡法案」の成立これらの4つの法案が成立したことによりアメリカ社会の空気は大きく変化したのである。
「自己責任」と「自助努力」というアメリカ建国当時のアメリカ精神というかアメリカ魂を、これらの法律の成立の過程でアメリカ社会が再確認したので.ある。
日本人はアメリカの「独り勝ち経済」「ニューエコノミー論」を、「IT革命」だけで捉えようとするが、こうした理解の仕方は大きく空に枝をのばしている大木を観察するときに、大地に深く張り巡らされた根を無視するに等しい過ちである。
1番目の「新農業法」は共和党多数の両院で可決されたが、当時C大統領は抵抗してしばらく署名しないのではといわれたいわくつきの法案であったが、意外にも1週間後に署名して驚かせた。
これにより1933年のR大統領のニューディール以来の農業政策の根本的変革がされた。
それまでの保護農政、農家保護のための補助金行政にたいして、「市場原理を導入」するという理念の大転換が行われたのである。
大恐慌当時の農家の悲惨さは、Sの「怒りの葡萄』にするどく描写されている。
その後、保護農政が延々と第2次世界大戦後も続いていた。
歴代の農務長官が農業法を抜本的に改めようと何度もトライしたが、いずれも失敗した。
1996年の「新農業法」は、生産調整を廃止して、作付けを生産者の自由にした。
補助金は7年後に全廃し、農業に市場原理を導入し、価格変動に強い農家に変えようという狙いがこの法案にはあった。
仮にアメリカの3分の1の農家が消滅しようとも、残り3分の2は先物市場もあるのでリスクのとれる市場原理に適応力のある強い農家になる。
農作物の価格補助金も財政赤字を生む大きな原因の一つであったから、「小さな政府」にしようという上院・下院を1994年から制する共和党の要請から法案化された。
これはその後、財政の健全化に大きく貢献することになった。
また、アメリカの国益という立場にたてば、このときからアメリカは将来「穀物を武器」として使うオプションを手にいれたことになるのである。
2番目の「福祉削減法」は、1996年8月の大統領選挙戦の最中にC大統領が、ある意味で追い詰められて署名したものだ。
Cは選挙参謀Dの助言にしたがって、選挙民の心理状況を世論調査で調べ、どんどん選挙公約を右寄りにシフトさせていった。
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